M&A契約における表明保証違反(東京地裁H28.6.3 東京地裁H27.6.22)

M&A契約における表明保証の重要性は今更説明をするまでもないかと考えます。

しかし、実際に紛争になると

①表明保証違反なのか否か
②仮に表明保証違反があったとして、賠償額はいくらが妥当か

が問題となります。

①については、表明保証違反の対象を正確に契約書に残しておくことにつきます。限界はありますが、疑義がないように定めておけば、後で問題となることは少ないです。契約書の中に細かく残さないとしても、例えば、メール等で意思確認を行えば、それも裁判になれば証拠になります。

②については、できるだけ賠償額の考え方を契約書の中に入れておくということが考えられます。しかし、現実的には難しいことが多いので、「表明保証違反と相当因果関係のある損害」といった程度の記載になることが一般的です。

表明保証違反が問題となった近時の裁判例を紹介します。

東京地裁H28.6.3 
この事件は、株式譲渡契約において、対象会社に簿外債務があることが後からわかった事案で、裁判所は全面的に、原告(譲受人)の請求を認めました。

東京地裁H27.6.22(東京高裁H27.12.02 控訴棄却)
この事件は、事業譲渡契約において、譲渡人Yが対象会社甲の現在行っている事業のために必要な行政当局の許認可、免許等は全て適法に取得されていることを表明保証した事案につき、引渡しを受けた工場のクリーンルームに、消防法等に違反する数量の危険物等が貯蔵され、同法による行政当局の許可を受けていなかっことが表明保証違反にあたるとしたものです。これは妥当な判断だと思われます。
ただし、譲受人Xは、Xが消防法違反解消のため要した工事費用全額を請求しましたが、Xが過大な工事をしたとして、全額は認められず一部のみを認めた事案です。

このあたりが、法律の難しいところでもあり、面白いところです!

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