このページはM&Aの代表的な方法について、スキームの比較をしています。それぞれのスキームについて、メリット、デメリットがありますので、当該事案に最も適した方法を選択して、実行することになります。
1 株式譲渡/減増資のメリット・デメリット
⑴ 株式譲渡/減増資の主なメリット
- 手続が簡便です(会社法183条、183条の2等)。短期間で実行可能です。
- 許認可を引き続き利用できます(法人格を維持するため)。
- 繰越欠損金が存する場合、利用できます(法人格を維持するため)。
⑵ 株式譲渡/減増資の主なデメリット
- 偶発債務を承継する可能性があります。
- 雇用調整が必ずしも容易ではありません。
- 事業の一部のみを承継することは予定していません。
- 対象会社に少数株主がいる場合、整理が必要になる可能性があります。
2 事業譲渡のメリット・デメリット
特に会社分割と比較した場合の、事業譲渡の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
⑴ 事業譲渡のメリット
・手続が比較的簡便で、短期で実行可能です。
・買い手企業は必要な事業(資産・負債・契約関係)だけを選んで買収できます。
・簿外債務を承継するリスクがありません。
・事業再生局面におけるM&Aにおいて、債務免除益課税(主に法人税)の負担や、過去における資本金の額を元にした事業税の外形標準課税の資本割りを回避することが可能です。
・(原則として)労働条件を承継しません。
・比較的雇用調整が容易です。
⑵ 事業譲渡のデメリット
・個別財産の所有権や契約上の地位の移転手続きが必要なので、移転については手間と費用がかかることが多いです。。
・許認可が原則として承継されないため、許認可を譲受会社で準備しなければなりません。
・資産移転に伴う登録免許税、不動産取得税、消費税などの税負担があります。
・繰越欠損金が存しても、譲受会社で利用することはできません。
3 会社分割のメリット・デメリット
⑴ 会社分割のメリット
- 事業譲渡にくらべ税務コストが軽減できることが多いです。
- 許認可の承継が可能であることがあります。
- 資産の移転が容易であることが多いです。
- 事業の一部のみを承継することが可能です。
⑵ 会社分割のデメリット
- 労働者保護手続(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)、事前開示及び事後開示手続(会社法782条1項、794条1項)、債権者保護手続(会社法799条1項2号)、株主総会決議などが必要となります。手続が比較的煩雑です。
- 雇用調整が必ずしも容易ではありません。
- 繰越欠損金があっても承継はできないのが一般的です